歯の移植という選択肢〜手術編Ⅱ〜
前回に引き続き、実際の手術の流れについてお話ししていきます。
移植床の形成は、
低速かつ無注水で慎重に進めていきます。
ドリルで骨を削る → 採取した自家骨を回収する → 次のサイズのドリルへ変更する
この工程を一つひとつ確認しながら繰り返し、
理想的な形に近づけていきます。

ある程度、移植歯が入るサイズまで形成できた段階で、
歯牙レプリカを用いた試適を行います。
歯牙レプリカとは、
CTデータから移植予定の歯の形態を再現し、
3Dプリンターで作製した模型です。
これにより、実際の歯を使用することなく、
適合状態や方向の確認が可能になります。

従来の歯牙移植では、
先に親知らず(移植歯)を抜歯し、
その歯を実際に移植床へ何度も出し入れしながら
形を調整していく方法が一般的でした。
しかしこの方法には大きなデメリットがあります。
それは、
歯根膜へのダメージと乾燥のリスクです。
歯の根の表面には「歯根膜」という組織が存在し、
これが移植後の生着に大きく関わります。
試適を繰り返すことでこの歯根膜が擦れてしまうと、
治療の成功率に影響が出る可能性があります。
さらに重要なのが「時間」です。
抜歯した歯は、
体外にある時間が長くなるほど乾燥が進み、
歯根膜の機能が低下していきます。
報告によっては、
18分を超えると生着率が大きく低下するとも言われています。
つまり、歯牙移植においては
「抜歯してから、いかに早く適切な位置に戻せるか」
が非常に重要になります。
その課題を大きく改善したのが、
この歯牙レプリカです。
あらかじめ移植床を完成に近い状態まで仕上げておけるため、
実際の歯を抜いてからの処置時間を大幅に短縮することができます。
私自身、この技術が導入されてから
歯牙移植の精度と安心感は大きく向上したと感じています。
もともと繊細でシビアな手術だからこそ、
こうした“時間と精度”のコントロールは非常に重要です。
歯牙移植を行う先生方には、
ぜひ取り入れていただきたい技術の一つです。
少し専門的なお話が続きましたので、
続きは次回にお話しします。
次回は、いよいよ実際に歯を移植する工程です。
あなたの歯が、1本でも多く残せますように。